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京都民医連精神科は、現在6名の常勤スタッフを有している。主には2つの病院(京都民医連中央病院、京都民医連第二中央病院)、1つの診療所(太子道診療所)に常勤医を配置し、診療および病院病棟のコンサルテーションを行っている。
特色としては、診療を行っている施設を取り巻く諸条件を反映し、極めて広範な病態の患者の診療に当たっていることが挙げられる。
医師の教育目標は、知識・技術・態度の3つの側面に分けることができる。これらは実際には明確に分けられるものではなく、本質的に重なり合うものであるが、便宜的に用いる区分としては有用である。
精神科の診療においては、他科以上に医師患者関係がそのまま治療に関わるという点で、「態度」という側面は特に重要視すべきことと思われる。そしてそこで必要とされる態度とは、患者や家族、その周囲の人々の苦悩を理解し、それを和らげるために援助しようとすることである、と言えるだろう。当然のことながら、精神科医となろうとする者の個性は様々であり、診療のスタイルもただ一つのパターンに押し込めることはできないし、望ましいことでもないであろう。しかし先に述べた態度を磨いていく努力を続けることは、どのような個性を持った精神科医であれその役割を果たすためには必要なことと思われる。ゆえに、その基本的な態度を身につける努力を続けること自体が精神科研修の主な目的の一つであろう。
そのためにも、自らの個性を知り、時々の心身の状態を理解し、自らのストレスに適切に対処する方法を身につけていくことが大切である。
個々の患者との関わりの中で起こったことをつぶさに検討していくことは、精神科研修のあらゆる基礎となるものである。よって、個々のケースのスーパービジョンは精神科の研修の中で最も重視されるべきものである。
精神科医がその専門性を必要とされる場所や状況は近年ますます増えている。単科精神病院、総合病院精神科、精神科診療所、精神科デイケアなどの医療機関はもちろんのこと、作業所、法定社会復帰施設などの精神科リハビリ施設、老人ホーム、老人保健施設などの老人福祉施設、保健所、精神保健福祉センター、児童相談所などの公的保健福祉機関、さらには学校や企業の相談室など数多くの場所で精神医療の専門家との連携・共同が求められている。
そしてまた、ストレス社会と呼ばれる現代の日本においては、統合失調症、気分障害、いわゆる神経症、アルコール依存を代表とする物質依存といった古くからの病態のみならず心身症等のストレス関連障害、現代的なパーソナリティ障害、不登校や出社拒否あるいは摂食障害など、様々な従来の枠にはまらない心の問題を持った患者が精神科を訪れてくる。また、老年期精神医療やリエゾン・コンサルテーションの需要も近年著しく増加している。こういった精神医療の多くの側面に「とりあえずの対処」ができる能力を身につけることは、精神科の中で何らかの専門性を持つ前に必要であり、精神科基礎研修の目標である。
知識面での研修については、基本的には主治医として治療しているケースを理解するための学習を積み重ねる中で結果として体系的な知識を身につけることをめざす。また、研修初期においてとりあえず必要と考えられる知識についてはいくつかのクルズスを開き学習することとするが、これはその後の研修の上で必要な知識を得るための目次のような役割を果たすであろう。基本的な文献については特に指定し、それを折りに触れ読むことをすすめる。また、技術面については、4.で述べるような技術の修得を目標とする。
資格としては、後期研修終了時点で精神保健指定医の取得を目指す。
卒後初期研修修了者。
他科より精神科への転科を目指す医師。
精神神経学会における精神科専門医制度にも対応したものとなる必要があるが、まずは精神科臨床医としての基礎的技術を身につけるために、適当と考えるシステムについて述べる。なお京都民医連精神科後期研修の期間は計4年間である。
精神病院においては、精神科単科病棟での研修、特に急性精神病状態の治療、特に強制入院治療、および慢性統合失調症などの長期入院患者の治療と社会復帰がテーマとなるであろう。
総合病院精神科・診療所では、いわゆる神経症、気分障害、ストレス関連疾患など、よりかかりやすい精神科という特徴を反映した患者や、リエゾン・コンサルテーションなどへの対応が大きな課題となるであろう。また統合失調症の外来治療やリハビリテーションも、精神医療の脱施設化の流れにある現在、重要な課題となるであろう。
いずれにせよ、どちらの研修場所でも共通してめぐりあう医療課題がむしろ多く、研修目標を基礎研修期間全体で達成することに留意したい。(*研修目標の詳細は省略)
なお、他県連等での研修中は、2ヵ月に1回の割合で精神科医師部会に出席し、研修について報告することとし、研修内容や到達度についてのチェックを行う。
また、精神病院における研修に入る前に、京都において京都民医連精神科での診療の概要を理解することを主な目的とした「精神科入門」コースを実施する。
精神科3・4年目の京都民医連精神科での精神科研修においては以下の指導医体制で研修指導が行われる。
研修指導責任者
精神科医歴10年以上の医師一名を研修指導全般の責任者として定め、同責任者は京都民医連の精神科研修状況を全てにわたって把握し、適宜研修上に必要な対策を行うものとする。
研修指導医
医師歴5年以上(うち精神科医歴4年以上)の医師から、各研修医に1名を研修指導医として定め、研修指導責任者と連携を取りながら臨床現場での研修医の指導に直接あたる。なお、研修指導責任者と研修指導医は兼任となる場合がある。
.2009年度指導体制・資格
伊藤 明(1979年大阪大卒)京都民医連第二中央病院神経科科長
遠山照彦(1983年京都大卒)春日診療所神経科科長
安東一郎(1984年高知医大卒)京都民医連中央病院精神神経科科長、京都市嘱託精神保健医、日本福祉大学社会福祉学部非常勤講師
北村隆人(1993年京都府立医大卒)京都民医連中央病院精神神経科
北村婦美(1996年京都大卒)京都民医連中央病院精神神経科
近藤 悟(1996年京都府立医大卒)京都民医連第二中央病院神経科
※ 当研修を修了した者は、法人理事会の承認を経て、当科常勤医として就職することができる。更に当科部会の検討にもとづいて、当院に在職のままより専門性の高い精神科医療機関・施設で専門研修を修めることができる。