Home > 医学生・研修医向け情報 > 後期研修案内 > 消化器内科
消化器分野は非常に広範囲の内容が含まれていおり、また技術の進歩・知見の改変のテンポも速い。そんな中にあって現在の我々の陣容と守備範囲は、決してそのすべてを網羅できているものではないことを我々は自覚している。しかしながら日常よく遭遇し解決を迫られる疾患・病態については、我々は十分な訓練の場を提供できるものと考えている。大学施設等ではある特定の分野には多くの患者が集中しているが、それ以外は同じ消化器分野でもほとんど修練する場面が極端に少ないということが稀ならず発生している。我々はまず消化器診療の基本をまんべんなくしっかりと身につけていただくことを研修の基本にすえたい。
そうした基本をおさえつつも当科では、各々の担当医が鋭意取り組んできた仕事がある。早期胃癌・早期大腸癌の内視鏡切除、肝血流動態の解析、H. pylori胃炎の発癌や内視鏡像の検討、潰瘍性大腸炎の拡大内視鏡像の検討などである。これらは他施設の単なる模倣ではなく創意と工夫を発揮してきたものである。
むろん日常診療の場面ではもちろんEBMに基づく診療が求められることは自明であるが、我々はそれだけにとどまらず、未知なるものにも挑み新たな知見を得たいと考えている。消化器分野の手技・技能を獲得するのは容易ではないが、加えて臨床研究を同時に進めるのはなお難しい。しかしそれでも我々の精神に共鳴し、やってやろうというチャレンジ精神にあふれた若き人々の参加を期待する。我々自身も初心にかえり襟を正して迎えたい。
西田 修 昭和52年京都大医学部卒
日本内科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会指導医、日本超音波医学会指導医:肝、肝血流動態、超音波診断
田中憲明 平成3年滋賀医大卒
日本内科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会指導医、日本超音波医学会指導医:肝、肝血流動態、超音波診断
木下公史 平成8年島根医大卒
日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医:胃癌・大腸癌の内視鏡切除術、各種内視鏡治療、炎症性腸疾患、肝intervention
消化器診療は技術獲得の過程が長く苦しい日々が続く。しかしだからこそ、その苦難を乗り越えた時の喜びも大きい。後期研修の最初の2年間はそのような覚悟が必要である。
消化器分野の基本的な診断治療手技の修得と、疾患各論での体系的な診療技能の修得を目指す。とりわけ、消化器分野では、内視鏡やIntervention分野の技術革新は日進月歩であるが、この分野での技能獲得の基礎となる、内視鏡検査、超音波検査、消化管造影やCT・MR・IVRなどの放射線検査の基礎的な手技・検査への習熟と診断能力の獲得に重点をおいて研修していただくことになる。
同時に、我々の医療機関は地域の第一線にあるのであるから一般内科の総合的な診療にも引き続き研鑽をつんでいただく。
1)後期研修1年目
2)後期研修2年目
3)後期研修3年目
4)通年的な研修
後期研修消化器コースを予定する者は、開始時点で消化器病学会に入会し、後期研修の終了後の早い時点で消化器病学会専門医の受験申請を行うものとする。消化器内視鏡学会、肝臓学会、超音波学会等の関連学会についてもこれに準じた扱いとする。
ただし前期研修後ただちに内科専門研修の消化器コースをえらばず、他のコースを1年以上履修した場合で、本人が希望する場合には、3年目の研修プログラムを変更するなどフレキシブルに対応し、消化器病学会専門医受験資格の取得までの期間が最短になるよう調整することも考慮する。
研修終了後は、京都民医連の各院所をひとつの施設と見なして全体的に診療の目が行きわたるように各院所での勤務にあたる。本人の希望や、勤務病院の学会認定資格取得状況、大学での研究など、状況に合わせて逐次協議の上決定する。中央病院以外の勤務になった場合でも、「4通年的な研修」で示したごとく「生涯研鑽」の気風を失わないこと、定期カンファレンスや学会には必ず参加し発表するものとする。
京都民医連には独自の研修制度があり、専門研修終了後の一定期間ののち、身分と給与が保障された他施設への1年程度出向研修を行う制度がある。現在までに、東京女子医大消化器病センター、昭和大学藤が丘病院、国立がんセンター病院、大阪府立成人病センター、甲府協立病院、北海道勤医協中央病院などへ出向している。研修の派遣については、様々な考え方があるが、その時々の課題や本人希望など総合的に判断していくことになる。
また、後期研修中やその後の通常勤務においても、週1回の研修日の制度があるので、積極的に活用する。現在、京大消化器内科のカンファレンス出席や内視鏡研修などを実施してきている。
若干名
この研修カリキュラムは、「日本消化器病学会専門医研修カリキュラム」(2005年3月日本消化器病学会;日本消化器病学会専門医制度。日本消化器病学会雑誌Vol.103 No.3 2006.(12)-(20))に記載されている内容のうち「内科系」のものを抜粋し、一部現状に即して改変したものである。なお、血液尿糞便の項目は割愛している。
達成目標を次の通りA、B、Cの3段階に分ける。
I.診断 II.治療手技
A:独立して行える必要がある。※は内容を理解しており結果を評価できればよい。
B:経験することが望ましいが、経験がない場合は見学で補うことができる。
C:経験がなくとも十分な知識を持っていればよい。
III.疾患
A:経験する必要がある。
B:経験することが望ましいが、経験がない場合は見学で補うことができる。
C:経験がなくとも十分な知識を持っていればよい。
I.診断
A.消化管
1.X線検査 | |||
a 食道 | A | ||
b 胃、十二指腸 | A | ||
c 低緊張性十二指腸造影 | B | ||
d 小腸 | A | ||
e 大腸 | A | ||
2.内視鏡検査(生検、色素法、超音波内視鏡、EUSを含む) | |||
a 食道 | A | ||
b 胃 | A | ||
c 十二指腸 | A | ||
d 小腸 | C | ||
e 大腸 | A | ||
3.胃液検査 | B | ||
4.消化吸収試験 | |||
a 糞便脂肪染色 | B | ||
b 糞便脂肪定量 | B | ||
c D-キシロース試験 | B | ||
d ビタミンB12吸収試験 | B | ||
5.蛋白漏出試験(α1-アンチトリプシン試験) | B | ||
6.pHモニタリング検査 | C | ||
7.食道内圧検査 | C |
B.肝、胆、膵、腹腔
l.X線検査 | |||
a 胆道造影 | |||
1)経口法 | C | ||
2)経静脈法 | A | ||
3)直接胆道穿刺法 | B | ||
4)術中胆道造影 | C | ||
b 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)※ | A | ||
c 血管造影 | |||
1)腹腔動脈※ | A | ||
2)上腸問膜動脈※ | A | ||
2.画像診断 | |||
a 超音波検査 | |||
1)診断 | A | ||
2)超音波誘導下穿刺及び生検 | B | ||
3)術中診断 | C | ||
b CT※ | A | ||
c 磁気共鳴画像(MRI1MRCP)※ | A | ||
d 肝胆道RI検査※ | A | ||
3.内視鏡検査(細胞診、生検、超音波内視鏡(EUS)、管腔内超音波検査(IDUS)を含む) | |||
a 胆道鏡および膵管鏡検査 | C | ||
b 腹腔鏡検査 | B | ||
4.肝生検 | B | ||
5.十二指腸液検査(Meltzer-Lyon法) | C | ||
6.膵外分泌機能検査 | |||
a BT-PABA(PFD)試験 | C | ||
b セクレチン試験 | C | ||
c 糞便中キモトリプシン活性 | C | ||
7.血糖検査(ブドウ糖負荷試験) | A | ||
8.腹水の一般検査及び細胞診 | A |
II.治療手技
A.消化管
a 食道バルーンタンポナーゼによる止血 | B | ||
b 食道バルーン拡張術 | B | ||
c 食道静脈瘤硬化療法(EIS) | B | ||
d 食道静脈瘤結紮術(EVL) | B | ||
e 内視鏡的粘膜切除術(EMR) | B | ||
f 内視鏡的止血処置 | B | ||
g 内視鏡的ボリープ摘除術 | B | ||
h その他の内視鏡的治療手技 | C |
B.肝、胆、膵
a 経皮的ドレナージ(胆道・膿瘍・嚢胞) | B | ||
b 肝動脈塞栓療法(TAE) | B | ||
c 動注化学療法 | B | ||
d 腫瘍内局所注入療法(PEIなど) | B | ||
e 内視鏡的治療手技およびドレナージ(EST、ENBD、ステントなど) | B | ||
f 血漿交換および血液浄化療法 | B | ||
g 経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS) | C | ||
h バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO) | C | ||
i 放射線療法 | C | ||
j 温熱療法 | C | ||
k 体外衝撃波結石破砕(ESWL) | C | ||
l マイクロウェーブ凝固療法 | B |
III.疾患
A.消化管
l.食道疾息 | |||
a 食道炎 | A | ||
b 食道潰瘍 | B | ||
c Barrett潰瘍 | C | ||
d アカラシア | A | ||
e 食道癌(dysplasiaを含む) | A | ||
f 食道肉腫 | C | ||
g 食道良性腫瘍 | C | ||
h 食道裂孔ヘルニア | A | ||
i 食道憩室 | A | ||
j 食道静脈瘤 | A | ||
2.胃・十二指腸疾患 | |||
a 急性胃炎 | A | ||
b 慢性胃炎 | A | ||
c 胃・十二指腸潰瘍 | A | ||
d 吻合部潰瘍 | A | ||
e 胃癌 | A | ||
f 胃癌以外の悪性腫瘍 | A | ||
g 胃良性腫瘍(ポリープ、粘膜下腫瘍など) | A | ||
h 十二指腸腫瘍 | B | ||
i 胃軸捻転症 | B | ||
j 胃憩室 | B | ||
k 十二指腸憩室 | A | ||
l 蛋白漏出性胃腸症 | B | ||
m 胃切除後症候群 | B | ||
n Mallory-Weiss症候群 | A | ||
o 急性胃拡張 | C | ||
3.腸疾患 | |||
a 腸炎(腸管感染症、細苗性食中毒を含む) | A | ||
b 虫垂炎 | A | ||
c Crohn病 | A | ||
d 潰瘍性大腸炎 | A | ||
e 腸結核 | A | ||
f 薬物起因性腸炎 | A | ||
g 非特異性腸潰瘍 | B | ||
h アフタ性大腸炎 | A | ||
i 大腸ボリープ | A | ||
j 大腸癌 | A | ||
k 小腸腫瘍 | C | ||
l 上腸間膜動脈症候群 | C | ||
m イレウス | A | ||
n 過敏性腸症候群 | A | ||
o 吸収不良症候群 | C | ||
p 虚血性腸炎 | A | ||
q 盲係蹄症候群 | B | ||
r 憩室炎 | A | ||
s 巨大結腸症 | B | ||
t 消化管カルチノイド | B | ||
u 消化管ポリポーシス | B | ||
v 遺伝性非ポリポーシス性大腸癌 | C | ||
4.肛門疾患 | |||
痔核、痔痩、裂肛 | A |
B.肝、胆道
1.肝疾息 | |||
a 急性肝炎 | A | ||
b 亜急性肝炎 | A | ||
c 劇症肝炎 | A | ||
d 慢性肝炎 | A | ||
e 自己免疫性肝炎 | A | ||
f 原発性胆汁性肝硬変 | A | ||
g 肝硬変 | A | ||
h 薬物性肝障害 | A | ||
i アルコール性肝障害 | A | ||
j 肝内胆汁うっ滞 | A | ||
k 体質性黄疸 | A | ||
l 脂肪肝 | A | ||
m 代謝性肝障害 | B | ||
n 伝染性単核症、サイトメガロウイルス感染症 | A | ||
o Weil病 | C | ||
p 肝寄生虫症 | C | ||
q 肝膿瘍 | A | ||
r 肝嚢胞 | A | ||
s 肝癌 | A | ||
t 肝癌以外の肝悪性腫瘍 | B | ||
u 肝良性腫瘍 | A | ||
v 特発性門脈圧充進症 | A | ||
w 肝外門脈閉塞症 | B | ||
x Budd-Chiari症候群 | B | ||
y 肝内結石症 | A | ||
2.胆道疾患 | |||
a 胆石症 | A | ||
b 胆嚢/胆管炎 | A | ||
c 胆嚢腺筋腫症 | A | ||
d 胆道腫瘍(十二指腸乳頭部腫瘍を含む) | A | ||
e 膵・胆管合流異常 | A | ||
f 先天性胆道拡張症 | B | ||
g 原発性硬化性胆管炎 | B |
C.膵疾患
a 急性膵炎 | A | ||
b 慢性膵炎(膵石症) | A | ||
c 膵嚢胞 | A | ||
d 膵癌 | A | ||
e 膵内分泌腫瘍 | B | ||
f 膵発生異常 | B |
D.腹腔腹壁疾患
a 急性腹膜炎 | A | ||
b 癌性腹膜炎 | A | ||
c その他の腹膜炎 | C | ||
d 横隔膜下膿瘍 | A | ||
e ヘルニア | A |